住宅ローン控除について(2)
住宅借入金等特別控除の見直し
令和4年度の税制改正により、住宅借入金等特別控除が対象となる住宅の区分、借入限度額、控除率、控除期間などについて見直しされ、より複雑な制度になっています。
(令和3年度の改正内容については、住宅ローン控除について(1)を参照してください。)
特に令和4年入居の場合は、今回の改正とは別に令和3年度に定められた住宅投資の需要喚起のための新型コロナ税特法改正法(以下、「コロナ税特法」といいます。)により、売買契約等の時期によっては内容の異なる控除を選択できるケースもあるため注意が必要です。
これらをふまえ、まず対象となる住宅の区分について解説し、以下、改正のポイント、令和4年入居の場合の留意点等の順序で説明します。
2022.10.9
1.住宅の区分
改正前は、対象となる住宅の区分については認定住宅と一般住宅の区分がなされていただけでしたが、今回の改正では住宅の省エネ性能等に応じて更に区分が細分化されました。
住宅の区分によって控除限度額や控除期間が異なりますので、対象となる住宅がどの区分に当たるかを住宅性能評価書などで確認します。
また、改正前の新築住宅と既存住宅(中古住宅)の態様とは別に、新しい態様として「買取再販住宅」が創設されました。
認定長期優良住宅(従前どおり)
国が定めた長期優良住宅認定制度の基準を満たし、行政の認定を受けた高性能の住宅をいいます。
認定低炭素住宅(従前どおり)
国が定めた低炭素建築物認定制度の基準を満たし、行政の認定を受けた二酸化炭素の排出の抑制に資する住宅をいいます。
法令上、上記の認定長期優良住宅と認定低炭素住宅を併せて「認定住宅」といいます。
ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅(新設)
「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準省エネ住宅」とは、大幅な省エネと再生可能エネルギーの導入により、年間の一次エネルギーの消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅をいいます。
具体的には、日本住宅性能表示基準の断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する住宅です。
省エネ基準適合住宅(新設)
一定の省エネ基準を満たした住宅をいい、具体的には日本住宅性能表示基準の断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅です。
法令上、前述の認定住宅に加えて、ZEH水準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅を併せて「認定住宅等」といいます。
「認定住宅等」以外の住宅は、一般住宅として区分されることになりますが、一般住宅の令和6年及び7年の入居の取扱いについては注意が必要です。
後述する4.その他の留意点の(1)を参照してください。
買取再販住宅(新設)
宅地建物取引業者が、既存住宅に国が定めた一定基準の増改築等を行って良質化した上で販売する居住用家屋をいいます。
例としては、耐震化、バリアフリー化、省エネ化、耐久性向上などのための大幅なリフォーム工事を行った住宅などを指します。
宅地建物取引業者が買取して上記の工事を行わないで単に再販する場合などはこれに当たりませんので、注意してください。
2.改正のポイント
(1) 従前の適用期限(令和3年12月31日)が令和7年12月31日まで4年延長されました。
(2) 控除率が1%から 0.7%に改定されました。
(3) 適用対象者の所得要件が合計所得金額3,000万円以下から2,000万円以下に切り下げられました。
※ただし、令和5年12月31日以前に建築確認を受けた床面積が40u〜50u未満の住宅(特例住宅)については、合計所得金額が1,000万円を超える年分について適用はありません。
(4) 既存住宅(中古住宅)の取得については、従前の築年数要件(非耐火住宅20年以内・耐火住宅25年以内)を廃止し、代わりに新耐震基準に適合している住宅の用に供する家屋が要件とされました。
併せて、登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については新耐震基準に適合しているものとみなすこととなったため、登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋が対象となりました。
対象となる住宅ごとの入居年に対応する借入限度額・控除率・控除期間は以下のとおりです。
3.令和4年入居の場合の留意点
令和4年入居の場合の主な適用要件は、上記2の改正のポイントに掲げたとおりですが、これは租税特別措置法の改正によるものです。
令和4年入居の場合については、これとは別に令和3年に定められたコロナ税特法6の2により規定されている適用要件も存在します。
具体的には、新築住宅の消費税が10%の物件の取得で、その契約が次の期間内にされている場合(特別特例取得)は、上記の租税特別措置法と異なり、適用される控除率が現行の1%、所得要件は合計所得金額3,000万円以下となります。
請負契約(注文住宅)の場合 令和2年10月1日〜令和3年9月30日
売買契約(建売住宅)の場合 令和2年12月1日〜令和3年11月30日
このことから、令和4年入居の場合は、コロナ税特法に定める上記の契約期間内の契約に基づく新築住宅の取得であれば、どちらか有利な控除方法を選択できるということになります。
また、床面積が40u〜50u未満の家屋(特例住宅)の新築取得(特例特別特例取得)についても上記の契約期間内であれば適用がありますが、その場合の所得要件は上記2の(3)の但書きのとおり、合計所得金額1,000万円以下になります。
令和4年入居の場合の租税特別措置法とコロナ税特法の適用要件を比較すると以下のとおりとなります。
(注)特例住宅の所得要件は、上記の表にかかわらず合計所得金額1,000万円以下となります。
なお、コロナ税特法を適用する場合の控除期間は13年となっていますが、11年目〜13年目の控除額の計算は以下の算式のいずれか少ない金額となります。
A:借入金年末残高 × 1.0%(借入金残高の上限は4000万円、認定住宅の場合は上限5000万円)
B:建物購入価格 × 2% ÷ 3(借入金残高の上限は4000万円、認定住宅の場合は上限5000万円)
租税特別措置法の改正で控除を受けることのできる所得要件が合計所得金額2,000万円以下に切り下げられましたが、令和4年入居でコロナ税特法の要件(特別特例取得)に該当する場合は、合計所得金額2,000万円〜3,000万円の階層の方でも控除できることになります。
4. その他の留意点
令和4年入居の場合以外にも注意すべき事項があり、従前の制度との比較で管理者が気づいた点をまとめてみました。
(1) 一般住宅の取得について
令和6年及び7年入居の場合、対象となる認定住宅等以外の一般住宅は、以下のいずれかに該当することが要件となります(控除期間は10年間)。
令和5年12月31日以前に建築確認を受けたもの
令和6年6月30日以前に建築されたもの
この要件は、省エネ性能等の高い住宅を優遇する方向性が強まり、一般住宅についても一定の省エネ基準を求めることになったためのものであり、この要件に該当しない令和6年1月1日以降に建築確認を受ける新築住宅(登記簿上の建築日付が令和6年6月30日以前のものを除く。)については、上記の省エネ基準を満たしていないと控除できないことを意味しますので、一般住宅の取得を計画されている方は注意が必要です。
(2) 既存住宅(中古住宅)について
令和4年以降の入居について、築年数要件(非耐火住宅20年・耐火住宅25年)が(登記簿上)昭和57年1月1日以降の建築の家屋に変わっていますので、中古住宅の取得を計画されている方は注意が必要です。
また、新築住宅と異なり、床面積が40u〜50u未満の家屋(特例住宅)は対象になりません。
なお、既存住宅の控除期間は、いずれの場合も10年間になります。
(3) 買取再販住宅について
令和6年及び7年入居の場合、対象となる認定住宅等以外の一般住宅に区分される買取再販住宅については、上記4の(1)と同じ取扱いとなります。
また、新築住宅と異なり、床面積が40u〜50u未満の家屋(特例住宅)は対象になりません。
ここまでの記載は、令和4年5月1日現在の法令に基づいて改正事項等の要点をまとめたものです。
住宅借入金等特別控除については上記以外にも要件がありますので、詳細については国税庁ホームページなどで確認をお願いいたします。