無申告加算税について(1)

令和5年度税制改正により内容が改められています。
無申告加算税について(2)をご覧ください。
2019.11.8
人気お笑い芸人の申告漏れと所得隠しがTVやネット上で取り上げられ、話題となっています。
個人事務所(法人)が無申告を繰り返していたなどと伝えられていますが、無申告の状態で税務調査を受け、期限後申告を行った場合のペナルティーはどうなるのか?
ここでは個人の所得税及び復興特別所得税(以下、所得税といいます。)を例として説明します。

 

期限後申告をしたり、所得金額の決定処分を受けたりした場合には、本来納付すべき所得税のほかに無申告加算税が賦課されます。
無申告加算税については、国税通則法により次のように定められています(調査による更正又は決定の予知後に課される場合)。
1.原則

期限後申告で納付すべき税額が50万円までは15%の割合を乗じて計算した金額
期限後申告で納付すべき税額が50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額

仮に、期限後申告に係る納付すべき所得税(本税)が1,000,000円であったとすると、
賦課される無申告加算税は、

 

(500,000円×15%)+(500,000×20%)=175,000円

 

となります。

 

これが原則的な取扱いですが、過去に調査等により無申告加算税や仮装・隠ぺいを伴う所得隠しなどで重加算税が賦課されていた場合には、次のような加重措置があります。
2.加重措置に該当する場合

平成28年度の税制改正により、短期間に繰り返し無申告又は仮装・隠ぺいが行われた場合の加算税の加重措置が導入され、期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前の日までの間に同じ税目について無申告加算税(調査による更正又は決定の予知後に課されたものに限ります。)又は重加算税を課されたことがあるときは、上記1の原則の割合に10%の割合を乗じて計算した金額が加算されます。
大まかにいうと、過去5年間の間に調査等により無申告加算税や重加算税が賦課されている場合は、加算税の割合が原則の更に10%増しになるということです。

そうすると、この場合に賦課される無申告加算税は、

 

(500,000円×25%)+(500,000×30%)=275,000円

 

となり、更に負担が増すこととなります。
なお、この加重措置は、平成29年1月1日以降に法定申告期限を迎えた国税が対象とされることから、所得税については平成28年分(法定申告期限:平成29年3月15日)から適用されることになっています。

 

以上の例は、仮装・隠ぺい行為のない無申告の場合です。仮装・隠ぺい行為を伴う悪質な無申告の場合の無申告加算税に代えて課される重加算税の割合は、原則が本税の40%、加重措置の場合は50%となり、相当な代償を支払うこととなります。

 

以上が無申告加算税の計算の概略ですが、他に本税に対する延滞税(遅延利息)が日割り計算でかかります。
延滞税の計算方法は、次のとおりです。

納付すべき本税の額×延滞税の割合×日数/365=延滞税の金額(100円未満切捨)

日数は、法定納期限の翌日から完納の日までをカウントしますが、期限後申告を行ってから2ケ月を経過すると延滞税の割合が変わります。
令和元年11月現在の延滞税の割合は、期限後申告を行ってから2ケ月までは年率2.6%、それ以後は年率8.9%となっています(年分によって延滞税の割合は変動します。)。

 

具体例として、平成30年分の所得税が無申告で、調査により令和元年11月8日に期限後申告を行って同日に1,000,000円を完納した場合(法定納期限は平成31年3月15日)を計算すると、

 

1,000,000円×2.6%×238日/365日=16,900円(100円未満切捨)

 

となります。
(238日は、平成31年3月16日〜令和元年11月8日の日数)
上記の例は期限後申告と同時に所得税を完納したケースですが、期限後申告をしても納税できない場合は、期限後申告の2ケ月後から延滞税の割合が8.9%に跳ね上がることになります。

延滞税の計算方法の詳細については、国税庁HPの TOP→納税手続→国税の納税手続→[備考]延滞税の計算方法 を参照してください。

 

所得税に関する内容は以上のとおりですが、個人事業主であれば他に従業員の給与に対する源泉所得税や消費税の課税事業者に該当する場合には消費税についても課税が行われることとなりますし、国税が無申告のケースは住民税や事業税などの地方税の申告にも不備がある場合がほとんどですので、これらを考え併せると単に所得税だけでない大きな問題に発展することとなります。
適正な期限内申告・納付が大切なことがお分かりいただけたかと思います。