曲がり角に来たふるさと納税

2019.10.22
2008年度にスタートしたふるさと納税制度は、初年度の81億円から2018年度には利用者395万2千人、前年度の40%増の5127億円を集めるなど急拡大しました。
その一方で、アマゾンギフト券などの高額な返礼品で多額の寄付金を集めた泉佐野市(2018年度は497億円)などがその趣旨にそぐわないとして俎上に上がったことをきっかけに、今年6月の新制度から除外された泉佐野市が総務相を提訴するなど制度を巡って異例の様相を呈しています。

 

ふるさと納税の返礼品は、もともと感謝の手紙などが始まりとされていましたが、今では和牛などの高級食材やギフト券など実質2000円の負担でネットの運営サイトから各地の高額な返礼品が選び放題であることから「官製通販」と揶揄されるほどの盛況ぶりです。
個人の得したい気持ちは分からないではありませんが、運営サイトがテレビCMで寄付を促したり、減税される住民税には上限額があることから所得に応じた上限額を試算するサイトまで現れるなど過熱する現状を見ると、対価を求めない寄付本来のあり方からは乖離していると言わざるを得ません。

 

地方の活性化や地場産業の振興など副次的な役割は認めるとしても、ふるさと納税という郷愁を呼ぶ言葉の響きの裏側にあるのは、自治体同士の「税金の分捕り合戦」に他なりません。
ふるさと納税が拡大しても全体のパイが増えるわけではなく、返礼品競争も自治体が本来やるべき仕事とは言えません。
また、寄付手続の代行などのために各自治体が民間の運営会社に支払う手数料は寄付額の最大15%から20%に上ると推測され、このことも問題点として指摘されています。

 

総務省は今年6月の制度改正で「返礼品は寄付額の3割以下の地場産品」などの基準を設けましたが、財源の奪い合いの本質は変わらないものと思われます。
最近、管理人の住む生駒市では遺言代用信託を使って市に遺贈寄付する「ふるさと相続」という取組を始めましたが、各自治体にはふるさと納税に代わる地域に応じた新しい取組が求められる時期が来ているのではないでしょうか?