事業承継税制について

【今回は、このサイトの本旨とする所得税からは少し外れた範疇の問題になりますが、その概略をまとめてみました。】
2019.12.11

 

現在、我が国が少子化対策と同様に取り組むべき喫緊の課題として中小企業の事業承継の問題があります。
これに対応する事業承継税制については、最近の税制改正により10年間の限定期間付きで、以下のような特例が設けられています。

 

法人の場合

法人については、平成30年度税制改正において新たに特例措置が設けられ、後継者が「特例承継計画」を都道府県知事に提出してこれが適用できる場合には、非上場株式等の贈与又は相続等について一定の要件の下に議決権株式のすべてが納税猶予対象となり、猶予割合も100%に拡大され、事業承継時の後継者の税負担(贈与税・相続税)がゼロとなります。
また、猶予された贈与税・相続税は、後の後継者の死亡等によりその納付が免除されます。
適用期限は、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間です。令和9年12月31日までの贈与の実行又は相続の開始が対象となります。

 

個人の場合

個人については、令和元年度税制改正において個人版事業承継税制が創設され、青色申告(正規の簿記の原則によるものに限る。)の事業者(不動産貸付業等は除きます。)の後継者が「個人事業承継計画」を都道府県知事に提出してこれが適用できる場合には、一定の要件の下に贈与又は相続等により事業の用に供されていた一定の資産(特定事業用資産)が納税猶予の対象となり、事業承継時の後継者の税負担(贈与税・相続税)が軽減されます。
また、猶予された贈与税・相続税は、後の後継者の死亡等によりその納付が免除されます。
適用期限は、平成31年1月1日から令和10年12月31日までの10年間です。令和10年12月31日までの贈与の実行又は相続の開始が対象となります。

 

注意点

いずれも、事業承継税制適用の可能性を確保するためには、まず、法人の場合は「特例承継計画」を、個人の場合は「個人事業承継計画」をそれぞれ期限までに都道府県知事に提出し、確認を受ける必要があります。
期限  法人 令和6年3月31日(※令和4年度税制改正により1年延長)
    個人 令和6年3月31日
(上記計画を提出しても事業承継税制が強制されるわけではありません。)

 

対応策

事業承継税制の活用については、事業承継の可能性や相続税の発生見込みといった直接的な要因だけでなく、将来の経営計画や事業用資産の状況など経営上の事項について10年程度の長いスパンで総合的に検討(あるいは見直し)することが必要となります。
また、特例承継計画や個人事業承継計画の提出以外にも一定の手続が求められますので、税理士などと事前に相談や内容確認をしておくことが肝要です。

事業承継税制の詳細については、国税庁ホームページに掲載されている事業承継税制特集で確認していただくようお願いいたします。
国税庁HP TOPページ → その他のバナー一覧 → 事業承継税制特集